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zoom RSS 各国言語諸事情に関する覚書

<<   作成日時 : 2014/05/11 10:04   >>

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 4月に書いた記事が発掘されたので、今さらながらアップ。



 最近、まったくどうしてかと思うほど、言語政策や母語の危機に関する諸問題を見聞きします。積極的に関心を持って調べているわけでもないのに。

 母語を脅かされた経験のないわたしにとっては、正直、母語が存亡の危機に晒されている人々の気持ちをリアルに想像することはできませんが、こうした問題に遭遇するたび、人にとって言葉とは何かと、深く考えさせられます。

 こうした問題に関し、どう考えていいものやらさっぱり分かりませんが、いろいろ溜まってきたので、とりあえず現時点で知りえたことをここにまとめておきます。また何か分かり次第、適宜書き足していきます。


 
フィリピン

 各地方固有の言語が100以上あり、そのほとんどはアウストロネシア語族に分類されるが、相互理解が不可能なほどに異なるらしい(DMM英会話の先生談)。

 公用語はフィリピン語と英語。

 かつてはスペイン領で、スペイン語が公用語であった時期があるため、スペイン語からの借用語彙は多く、個人名などにもスペイン語が見られる。南部のイスラム化された地域などではマレー語やアラビア語も使用されているらしい。

 フィリピンの英語教育に関しては、過去記事参照。



 
トルコ

 公用語はトルコ語。トルコ語版wiki(Türkiye'de konuşulan diller(トルコで話される諸言語))によれば、トルコ共和国憲法には以下の条文がある模様。

Türkçeden başka hiçbir dil, eğitim ve öğretim kurumlarında Türk vatandaşlarına ana dilleri olarak okutulamaz ve öğretilemez.. (トルコ語以外、いかなる言語も、教育指導機関においてトルコ国民に母語として学ばせられたり教えられたりすることがあってはならない(※うさぎ訳))

 小島剛一著「トルコのもう一つの顔」の感想は過去記事参照。


 

エストニア

 公用語はエストニア語。

 朝日Globeの4月20日の記事「エストニア語を話しますか? 「言語警察」が能力チェック」によれば、ソビエト時代に移住してきたロシア系住民が全人口の25%を占め、警察官や教師、医師といった社会層がエストニア語を話せない場合、「言語警察」が出動し、罰金などを課すという。

 はたしてこれは、少数言語エストニア語の擁護なのか、それとも同国における少数派ロシア語に対する弾圧なのか。「少数派の尊重」といったきれいごとでは白黒つけられない。何を母数とするかで多数派と少数派が逆転するので。

 ちなみに隣国ラトビアの40%近い住民がロシア語話者だそう。多かれ少なかれ、旧ソビエト連邦内はどこも同じ問題を抱えていると思われる。



グアテマラ

 グアテマラの公用語はスペイン語だが、スペイン語話者は6割にすぎず、あとの4割は約22種類のマヤ系言語を母語としている。

 長らく、学校教育はスペイン語のみで行われていたが、昨年(2013年)から、小学校から大学まですべての教育過程において、地域語(たとえばシエラならキチェ語、アンティグアならカクチケル語)の指導が学校に義務付けられることになったそう(スパニッシモの先生方談)。

 ちなみにスパニッシモの先生方は誰もマヤ系の言葉を喋れず、「おじいちゃんなら喋れる」「お父さんなら少し喋れる」と言う先生はいた。「マヤの血を引くグアテマラ人がマヤ言語を喋れない」という事実が、「日本人でありながら着物を着られない」自分への疑問につながり、昨年着物を着始めるきっかけとなった。



レバノン

 denkoさんのブログ「ファンキー多読」の記事で教えていただいたTED「スザンヌ・タルホーク: あなたの言語を殺さないで」では、科学や研究、大学や職場などでアラビア語が使用されない現状に警鐘を鳴らす。スピーチはアラビア語アーンミーヤ。

يقال بأنه إذا أردت قتل شعب، الطريقة الوحيدة لقتل شعب، هي بأن تقتل لغته
(よく言われることですが ある国を消滅させる 唯一の方法はその国の言葉を 滅ぼしてしまうことだそうです)

 世界の十指に入り、国連公用語でもあるアラビア語ですら存亡の危機に晒されるというのは衝撃的。

 スピーチ中に出てくる「تقبرني (toqborni)」は、愛する人への呼びかけで、レバノン特有の表現らしい。(元は「わたしを埋葬して」→「わたしより先に死なないで」の意味) Arabic related thought参照。



アメリカ合衆国

 合衆国の公用語は、事実上英語だが、法律上、明文化されてはいない。

 別記事でも書いたが、トニー・ラズロ著「英語にあきたら多言語を! ポリグロットの真実」には、ハンガリー人とイタリア人の両親を持つ同氏が、弟と共に英語で育てられた経緯が語られている(p59〜60)。

アメリカ当局が我が家の言語使用に口を出していたわけではないのに、なぜこれが起きたのか。答えは親がそうした方がいいと思ってそうしたから、ということになる。つまり話者自らが進んで「言語放棄」をしたのだ。

 その理由の一つは、「社会的期待」。
アメリカには公用語はないものの、事実上英語がそれに当たる。そのほかの言語が禁止されているわけではないが、公の場では英語を求める「空気」がある。

 あと二つは経済的な問題で、一つは経費の問題。
絵本や雑誌からオシャベリ人形まで、アメリカでは英語のものなら安くかつ簡単に手に入るが、そのほかの言語だと何倍もの費用がいる。

 もう一つは、経済効果。
民族語に時間やエネルギーやお金を費やさず、全部「土地の言語」にかけた方が厳しい競争に勝ち抜くのには有利、と両親は感じたのだろう。
 

 社会的・経済的利便性を優先させた結果、話者が自ら母語を捨てる例として興味深い。




日本

 日本の公用語は日本語かと思いきや、憲法における正式な取り決めはないらしい。

 合衆国の例にもあるとおり、成文化されていない事実上の社会通念ほど厄介な相手はない。日本語が公用語であることに異議を唱えたい人が仮にいたとして、いったい何を相手に抗議すればよいのか。



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