益子旅行 その3  暗い夜道

チャアが学校から猛ダッシュで帰ってきてくれたので、予定通り、4時前に出発することができました。チャアとは駅で待ち合わせ。「ほら成績表、貰ってきたよ」とチャア。

「じゃあ旅先で見るってことで、神奈川を抜けたら見ようか」 ところが新川崎を過ぎても電車は一向に空く気配がなく、なんか気ぜわしくて成績表を見る気が起きない。
「きっと新宿過ぎたら空くよ。そしたら見よう」 ‥全然空かない。
「東京都を出て埼玉に入ってからにしようか」 ‥大宮を過ぎてもまだ混んでいる。
「‥なんかもう栃木なんですけど。水戸線に乗ったらにしようか」 ‥水戸線も混んでる。

結局、成績表を開いたのは真岡線に乗ってからでした。水戸線までは日常の延長でしたが、チェックのかわいい真岡線に乗ったところで、非日常が始まった気がする。前の座席では女子高校生がカップ麺を食べている。いやー、電車の中でお弁当くらいなら食べている人を見たことあるけど、カップ麺にお湯注いで電車の中で食べてる人って初めて見ました。このワンシーンで、非日常感がグッと強まり、ついに成績表を開く決心がついたのかも。

とはいうものの‥。

「ママ怖くて見れないから、アンタ先に見て。あ、喜怒哀楽の表情ははっきりとね。アンタの表情でママ判断するから。もし下がってたらそっとしておくから。下がってたらお互い成績のことは忘れることにしよう。あーでも、上がってるといいね。上がってるといいねー。でも下がっててもしょうがないよね。ウン、しょうがない。頑張ったんだからいいよね。人間、大事なのは努力だ。結果じゃない。‥ヨシ、下がってても落ち込まないぞ。これから益子に行くんだもんね。楽しい旅行だもんね。成績なんて小さなことだよ。ヨシ、下がっててもドンマイだ!」
「‥ママ。もう分かったから」
「あ、そうですか。スイマセン。ほら早く開きなさいよ」

「じゃ、開けます!」

「おお~~~~?!」
「どう?! 上がった? 下がった? 上がった? 上がった? 上がった?」
「き‥キタ‥来たァ~~~~~ッ!!」
「うそ! 何よ? 上がったの?! 上がった?! エッ、マジ?! ちょっと見してみ」

「おおおおおおお~~~~! 上がってるじゃな~い! やったね~~~! いやー、努力って報われるものね! ”ザッツマイガール”ってカンジ? あー、良かったよぉ~。おめでとう~~! ‥ま、ママの娘だもんね、こんなものでしょう」
「‥何それ? そういう納得の仕方しちゃう? 頑張ったの、あたしなんですけど」
「アハハハ‥。まあいいじゃない。露天風呂、楽しみだね~♪ ロクロも楽しみ! あー、なんだか俄然、楽しみになってきたわー♡」と母、上機嫌。


益子駅に到着したのは予定通り、夜の7時ごろでした。辺りはもう真っ暗。
「とりあえず、宿に電話しようか」とは言ったものの、宿の電話番号が、探してもない‥っ!!
行く可能性のあるレストランやら陶芸教室の電話番号は片っ端から地図に書き込んできたのに、なんでよりによって宿の電話番号が書いてないの~?!

「まあいいや。ここから歩いたって30分ぐらいだもん。とにかく一歩を踏み出そう」

とはいうものの、暗くて道が分からない。駅から益子の中心・共販センターまではほぼ一本道なのですが、どれがその一本道なのかが、暗くてよく分からないのです。仕方がないから人を見かけるごとに「すみません、共販センターへはこの道でいいんですよね?」と尋ねて確かめることに。城内坂のふもとにつくまでに、3回は道を聞いたかな。

城内坂のふもとで、エビコーサイクル発見!! まだ灯りがついています。営業は6時半までだって言ってたけど、もしかしてまだやっているのでは?? ダメ元で声をかけてみることにしました。
「ごめんくださーい!」

しばらくすると奥のほうからお店の人が出てきて、首尾よく自転車2台、貸してもらうことができました。1台につき1日500円。3段変速つきです。

重い荷物を自転車のカゴに押し込むと、急にラクになりました。目の前には城内坂。でも坂の町・横浜から来た我らにとっちゃ、こんな坂はなんのその。3段変速を「軽」にセットし、一気に共販センターまで上りました。フフン、どんなもんだい!


ところが、城内坂を上りきり、共販センターの前から道祖土(サヤド)と呼ばれるゆるやかなくだり坂に入ると、辺りの様子は一変しました。城内坂は益子の目抜き通りで、ゆったりとした二車線。通りの両側にはお店が立ち並び、広い歩道が完備されていて、街灯もある。けれども道祖土は昔ながらの田舎道で、歩道もないし、街灯もない。真っ暗な道でした。頼りになるのは自転車の小さなライトと、ときどき走り抜ける車のライトだけ。自転車を停めてしまうと、辺りは完全な暗闇となるのでした。でもこの暗さって、どこかで見たことある。‥そうだ、バリです。バリのウブド。益子のこの感じはウブドにそっくり!

この道からどこかで一本右に入ったところに益古時計はあるはず。ところがどこで右に入ればよいのか分からない。たしか「明窯(あきらがま)の看板のところで右に入ってください」と言われたのだけれど、真っ暗なので看板なんてあるのやらないのやら‥。これは全く想定していなかった事態でした。

とはいえ、道の選択肢はそう多くはない。道祖土(サヤド)から右に入る道は全部で4本。1本目は共販センターに近すぎるので違うとして、まずは2本目を入ってみることにしました。

ところがこれが急な坂で、さすがの横浜市民も自転車をこいでは上れない。ハアハア息を切らせて自転車を転がすも、なかなかホテルらしきものは見えてこない。

いい加減、7~8分は登ったかというところで不安になり、ちょうど車からドロップアウトして民家に入っていこうとしていた人影を呼び止めて道を尋ねました。
「すみません、益古時計っていう宿はこの辺でしょうか?」 庭先のライト近くに寄り、地図を見せました。
「いやー、益古時計? ‥ちょっと分からないです。この地図だと今、この辺にいるのかな?」と指し示されたのは、何も書かれていない白い空間でした。

そうか、やっぱり違ったか。その人にお礼を言って引き返すことに。

3歩目の道もまた上り坂でした。これも自転車を転がして登ると、途中でどうやら行き止まり‥?? 暗いのではっきりとは分からないのですが、なんとなく足元が砂利になってきてるし、どうも目の前には畑が広がっているような?? 仕方がないので引き返しました。

さて4本目。これがダメだったらもうどうしていいか分からない。でも4本目は割とフラットで走りやすい道でした。最近出来た道みたい。妙にそこだけ新しい、きれいな道です。グニグニ曲がっていて、右側が高くなっているので見通しが利かず、一体どこへ通じているの?という感じでしたが、思いもよらないところに「益古時計」発見! どうやら逆の方向から入ってきたようです。‥となると、当初探していた道は一体‥??

益古時計まあいいや。ともかく宿に到着しました。

ハアハアいいながら自転車を停めていると、「この坂で自転車はやはりきついですか?」とほかの宿泊客の方から声をかけられました。定年したばかりの老夫婦といった感じの方々です。珍しいなあ、日本人って見知らぬ人は無視っていう風潮が強いのに。もしかしてこの宿の客層、割と人懐こいタイプが多いのかな? そうだったら嬉しい。わたしもそうだから。


古時計それはそうと、まだ食事をしていない。時計を見ると、7時40分くらい。ずいぶんと迷っていたような気がしたけれど、駅を出てからまだ1時間は経っていない。益子で木曜の夜に唯一食事ができる店・絵里珈の閉店になんとか間に合いそうです。とりあえず、チェックイン手続きはそこそこに、荷物だけ置いて絵里珈に直行することにしました。

あー、これでコンビニ弁当から救われたわー。


絵里珈


煮込みハンバーグ定食絵里珈のコーヒー


また夜道を走って絵里珈へ。

絵里珈はバスなんかも通れる幹線道路沿い(といっても、自動車専用道みたいなのを想像してはいけない)にあり、外観も内装も、1970年代を彷彿とさせるお店でした。

うーん、とっても懐かしい感じ♡

‥と思うのはわたしの感覚で、中学生のチャアには目新しい様子。お花の形をしたオレンジ色の電灯のカサ見てチャア曰く:「変わったデザインだね。おもしろ~!」
わたし曰く:「いやー、昔流行った流行った、こういうの」

床材見ても壁紙見ても、わたしには懐かしい。チャアには目新しい。

でも食事が出てくると、二人とも声をそろえて「オオ~~~ッ!」 だって、益子の器が使われていたからです。「ああ、益子に来たんだね」としみじみ‥。

チャアが注文したのはカツ重、わたしが注文したのは煮込みハンバーグ定食(写真参照)で、いずれも洋食ですが、わたしが思うに、洋食って、西洋お料理というよりは、和食の一種なのね。和食にすっかり取り込まれた西洋料理。だから洋食器よりもむしろ和食器のほうが合う。日本のハンバーグは、英国製ボーンチャイナに盛るより、益子焼に盛ったほうが、きっとおいしいと思うわ。

ホント、ここのハンバーグもとってもおいしかったです。あと、スープもおいしかった! 付け合せはご飯とパンどちらも選べましたけど、「ハンバーグにはやっぱご飯でしょう!」なわたし。こういうハンバーグの味わい方を知っていて、日本人に生まれてよかったな、ってつくづく思いました。


案内ベッド洗面器


益古時計の部屋は、サイトで見た通りでした。案内に使われている隷書体に至るまで、マジ、好み^^。

ベッドは板の間にスプリングマットが敷いてあるもので、寝心地はベッド、だけど落ちる心配がない! 布団とベッドの良いところを組み合わせたナイスアイデアですね。

陶器の洗面台は、コレよ、コレ!って感じ。益子大好きなわたしには堪えられないアイテムであります。

それからチャアが大喜びしたのが、コレ、ホソカワカオリさんの時計です。 → 

チャアはこの時計と同じテイストのホソカワカオリさんのカップを愛用しているのです。わたしも大好き。今回の益子では、タイルの嵌ったこのシリーズをどこかで見かけるたび、二人してはにゃ~~ん♡ってなっていました^^;。本当に本当に、大好き。


そしてこの宿ではもう一つお楽しみが‥。

露天風呂であります!!

貸切の露天風呂って、もしかしたら初体験かも♡ それも夜に入るなんて!

←このプレートも素敵でしょ? オーナーさんが書いたのかなあ? この字体がいい味出してますよね。こういうところがつくづく、いいセンスだなあ、と思う。


夜の露天風呂夜空


湯船は広く、二人並んで腕立て伏せができるくらい。(注:もし風呂で溺れても、当局は一切関知しません)
温かいお風呂と、涼しい外気のバランスが嬉しく、湯船から出たり入ったりを繰り返しました。人間って水と空気だけで遊べるのよね。そんなに凝った娯楽は必要ないの。

見上げれば暗い夜空、聞こえるのは裏の林が風にざわめく音。あー、益子に来てよかった!

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