アラビア語の将来性 その3 アラビア語はお得? 

モザイク


 アラビア語に潜在的な興味を持つ人は多い、と「その1」で書きました。でもその割に、実際の学習者が少ない。これはなぜでしょうか。

 潜在学習者の数と実際の学習者の数に隔たりがある場合、以下のような理由が考えられます。

 1. 言葉を学ぶメリットが不透明
 2. 学習環境が整っていない(学べる場所が少ない・関連書籍が少ないなど)
 3. 学習が難しい

 ・・・うーん、これはまさにアラビア語の現状そのままですね(笑)。

 3については「その2」で書いたとおり、実際に「難しい」というより、「難しいと思い込んでいる」だけだと思うので、ここでは触れません。今日は1と2について考えることにします。

 現在人気の英語や中国語は、言葉を学ぶメリットがはっきり見えています。今の世の中、英語ができれば仕事はよりどりみどり~・・・というほど甘くはありませんが、英語が出来ることで、ビジネス上のメリットが得られる可能性は高い。たとえば英語奨励策として「TOEIC800点以上とったら給料UP」というような制度を設けている会社も多く、英語人気を後押ししています。中国語も同様。「次は中国」と誰もが思っているので、第二の英語となる可能性があります。

 そこへいくと、アラビア語スキルは滅多に求められることがなく、アラブ諸国大使館の求人でさえ、条件は「アラビア語ができること」ではなく、まず「英語ができること」です。アラビア語が話せるレアな日本人を探すより、英語ができる日本人を探して英語で話したほうが手っ取り早い、ということでしょうか。

 ただ、アラビア語は「レアなフィギュア」。大多数の人にとってはただのゴミでも、一部のマニアの間では高値で取引されるレアなフィギュアに似たものがあります。アラビア語スキルを求める求人は、数こそ少ないけれど確実に存在し、アラビア語スキルを武器に高待遇を得た人の話も聞きます。

 一昔前までアラブといえば石油を買いに行くところでしたが、最近は日本製品を売りにいくところのようです。アラブ人相手にアラビア語で商談をして、何か得をすることがあるようには思えませんが(むしろソンな気がする(笑))、アラビア語で話しかけることで、相手の懐に入るような効果が狙えるのでしょうか。アラブの商談はまず人間関係作りから始まる、というのはよく聞く話。アラビア語ができれば、ライバルに先んじることができるのかもしれません。

 英語や中国語は「確実なアドバンテージ」ではありますが、同じスキルを持った人が多いだけに、それだけで「強力な武器」とまではなりえない。一方アラビア語はビジネススキルとしての一般的認知度が低く、「確実なアドバンテージ」にはなりにくいけれど、希少価値があるので、当たれば大きく、「強力な武器」となりうる、といったところでしょうか。

 ビジネス面での話はそれくらいにして、文化的な側面ではいかがでしょうか。ここ数年、日本の漫画の普及により、日本語学習者が世界各地で増えている、と聞きます。マンガを言語(日本語)で読みたい!という若者が増え、日本語ブームを生み出しているのですね。

 同じように、アラブ文学を読みたいから、或いはエジプト映画が好きだからアラビア語を始めた、という話はよく聞きます。ただ文学にしろ映画にしろ、けっして日本ではポピュラーではないので、絶対数は少ない。アラビア語ができる人が少ないから、その文化が翻訳されて紹介されることも少なく、文化が紹介されないから、アラビア語を学ぶ人も少ない、という「タマゴとニワトリの関係」なのでしょう。今後、アラビア語を学んだニワトリが増え、たくさんタマゴを産めば、更にニワトリが増えるでありましょう。数少ないニワトリ(まだほんのヒヨコですが)の一人として、わたしも頑張らなきゃ、かな?(笑)

 外国語の学習環境は、インターネットのおかげで急速に整ってきました。話者が100万人を切るようなマイナー言語はいざしらず、話者人口数千万規模の言語なら、本気で学習したい意思と意欲さえあれば、日本にいながらにして、学習可能な時代になりました。NHKの外国語放送だけでも、日本語・英語を含む18ヶ国語で放送されていますし。

 ただウェブ上で見つかる外国語コンテンツはあくまでその言語の話者のためのものであって、学習者のためのものはまだまだ数が少なく、現実問題として、初心者がそれだけで学習するのは無理があります。鉄の意志を持った一部の超人を除く一般人にとって、やはり入門テキストや、初級辞書や、語学学校の整備は必須です。

 とはいえ、アラビア語の学習環境は、ここ数年で飛躍的に整ってきました。初のアラ日学習辞書が出たのが13年前、日アラはたったの6年前。それ以前、日本のアラビア語学習者は一体どのように学習していたのか、わたしにはまったく想像がつきません。2003年にNHKラジオのアラビア語講座が本格的に始まり、2004年にはテレビでもアラビア語講座が始まりました。2007年にアラビア語検定も始まり、昨年は画期的な文法書「文法ハンドブック」が出ました。最近始めたインドネシア語は、入門テキストの数は多いのですが、いかんせん辞書が弱く、それに比べるとアラビア語がいかに恵まれているかが良く分かります。

 学習者の増加と学習環境の整備も、ニワトリとタマゴの関係に良く似ています。学習者が増えれば学習環境が整い、学習環境が整えば、また学習者が増える。その最初のニワトリになったのは、本田孝一先生です。先生の存在がなければ、アラ日も日アラも生まれなかった。数々の入門テキストもなかった。NHKのアラビア語講座も始まらなかったかもしれない。アラビア語は今でも「ほんの一握りの外語大学生が学ぶマイナーな一言語」にすぎなかったでしょう。

 本田先生が産んだ珠玉のタマゴからヒヨコが次々と孵り、アラビア語を取り巻く状況は今、どんどん変わりつつあります。ひとたび弾みがつけば、雪だるまはどんどん転がって大きくなる。本田先生のほかにも、新妻先生や榮谷先生といったニワトリさんたちが続々とタマゴを産み始めました。全体のパイこそまだまだ少ないけれど、それだけに成長率は高い。もしかしたら今のアラビア語は、成長率から言ったらナンバー1の言語かもしれません。

 アラビア語学習環境は今や、普通の人が気軽に始められるところまで整ってきました。「レアなフィギュア」を目指すなら、まだまだヒヨコが少ない今のうち。アラビア語の雪ダルマは今転がり始めたばかり。真剣にやれば、今から始めても、充分間に合います。


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