「英語の話しかた」 國弘正雄

 「國弘流 英語の話しかた」を読みました。



國弘流 英語の話しかた 國弘 正雄 たちばな出版 1999年



 外国語学習法に関する本はほぼ読みつくしてしまったので(「外国語学習本ブックレビュー」参照)、最近は「英語学習法」にシフトしていますが、こちらは読んでも読んでも読んでも、まーだまーだまーだある。おそらく「外国語学習法」の数倍~10倍くらいあるんじゃないでしょうか。本当は一冊一冊感想を記しておきたいのですが、とても整理が追いつきません。

 でも今回の「英語の話しかた」は別格。とても良かったので、感想を纏めることにしました。


 著者の國弘先生は戦後、同時通訳として第一線で活躍し、その後ラジオ英語番組の講師を長く務められた方で、学習法は「只管朗読」、つまりいわゆる「音読」が中心。中学の教科書を何百回と読む。

 ・・・って、どこかで聞いた気がすると思ったら、「ぜったい音読シリーズ」の先生でした(過去記事参照)。

 わたしは正直、音読は苦手で、だから音読に関しては耳が痛いのですが、それ以外の部分はもう、「そう! そう!!」という箇所満載でした。


 全部書いていたらきりがないので、とりあえず二点に絞ります。

 まず、文法との向き合い方。

 よく、英米人は文法など一切知らぬのに、見事に英語を話すではないかなどという人がいますが、これは全くの誤解です。彼らが知らないのはknowing that的な文法の知識で、knowing howとしての文法能力はちゃんと備えている。そうでなくてどうして英語が話せましょう。(p115)

 「knowing that的」というのは、「I know that the earth is round」というときの「knowing(知り方)」、つまり知識として知っていることであり、一方、「knowing how的」というのは、「I know how to hit a homerun」(わたしはホームランの打ち方を知っている=ホームランが打てる)というタイプの「knowing(知り方)」のようです。

 規則の説明がまったく不要とは思いませんが、文法で最終的に必要なのは、まさに例文そのものです。(p134)

 これは「7カ国語をモノにした人の勉強法」が言うところの「帰納的文法観」と同じだと思う(過去記事参照)。


 最終的な結論はこれ:
解説としての文法は自分が必要と思う分量だけ勉強すればよい。自信があればゼロでもよい。各自が自分の置かれた状況と自分のタイプを判断して、自分で決めるものだ。他人が押し付ける問題ではない。(p148 原文も太字)

 まったくその通りだと思いました。文法要・不要論って不毛だと思う。なんでゼロか全部か、それしかないんだろうといつも思います。でもこの本が出たのはもう15年も前。そこでもう結論は出ていたのですねえ。



 あともうひとつ、すごくよかったのは、カード整理について書かれていたこと。忘れたくない例文・単語に出くわした場合、どう整理するかという問題。

 この件についてはずっと前から悩んでいるので、答えを期待したのですが、残念ながら、この本にも明確な答えはありませんでした。

 ただ、自分だけでなく、誰にとってもこれは難しい問題なんだ、ということが分かったのは大きな収穫だった。

 前にどんどん進もうとする心と、物事を整理しようという心はかなり反発しあうものなのです。解決策を示せと言われると困りますが、いつも自分の心を見張っていることです。本来手段であった情報処理が目的化してきたときは、それなりに不快感を感じるはずです。(p223)

 もう、まったくその通りでございます。こういうジレンマを感じているのは自分だけじゃないんだ、と分かって嬉しい^^。

 ヒントはいろいろ書かれていて、あと仲間集めの例もたくさんありました。こういうのが面白い^^。もう、見ているだけで血が騒ぐ。

 たとえば「What is ~」の応用例とか、「wear(身に着ける)」はどんなものに使えるかとか。"wear No.10"なんていう言い方があるんですねえ。シャネルの10番?!と思ったら、スポーツの選手の背番号だそうです^^。

 


 けっこう分厚い本(約350ページ)ですが、重要な部分は太字になっているので読みやすかったです。

 この本はまず「現実ありき」。甘いことは決して言わず、お勧めの「只管朗読」にしても、それだけでいいとは決して言っていません。だから、「これさえやれば」的なすっきりした答えの欲しい人には向かないと思う。

 でもいろんなヒントが詰まっている本です。最初は図書館で借りましたが、スルメのように噛めば噛むほど味が出るので、結局買っちゃいました。





 ちなみに著者は同じで、「英語の話しかた 国際英語のすすめ」(1984年 絶版)、「英語の話しかた―同時通訳者の提言」(1970年 絶版)という本もあります。タイトルが紛らわしいですが、上記とはまったく別の本。但し、同じ著者が書いているので、考え方は一貫しています。

 「国際英語のすすめ」で個人的に印象に残ったのは以下の箇所。

相手の目を見て対話するということは、日本人とアメリカ人の場合には、とりわけ重要な意味をもってきます。というのは、日本字にとって美徳ですらある伏目がちということが、アメリカ人――とくに白人――にとっては、きわめて好ましくないことに属するからです。相手の目をまっすぐ見て話さない人間を、アメリカ人は非礼であるとみなすか、嘘つきで誠意のない人間であるとみなすようです。(p179)

しかし成人は幼児とちがって、四六時中、英語にさらされることが事実上不可能であることを思うと、(中略)、ダイレクト・メソッドではあまりに非現実的、かつ非効率的であるといわざるをえません。

 むしろ日本語を排することなく、積極的に日本語を取り入れ、英語との対比においてその両者を二つながら同時に把握してきというアプローチのほうが、はるかに実情に即した、かつ効率の高いものではないでしょうか。(p190)


 「國弘正雄の英語の学びかた」という本もあります。こちらは「只管朗読」に的を絞って短く纏めてあります。文字が大きく、平易です。

 この本で一番よかったのは、この一文です:
いくら立派な教材でも、「努力の肩代わり」はしてくれません。(p78)


 






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