ポリグロットカンフェレンス3日目

 昨夜夜遅く、3日間のポリグロットカンフェレンス(Polyglot Conference)福岡から横浜の自宅に帰ってきました。

 そして今こうしてパソコンに向かって書いていてつくづく思うのは、無理をしてでも1日目と2日目の記事をその日のうちに書いておいてよかったな、ということ。

 なぜって、今こうして全てが終わり、落ち着いてパソコンに向かってみると、何を書いたらいいのか分からないからです。旅先でスマホを使い、様々な不便を感じつつ書いた記事は、いろいろと難はあるにせよ、今読み返すと、そのときの興奮、そのときの臨場感がリアルに思い出せる。今からこの3日間を振り返ってみると、いろいろ考えすぎて書けない。

 1日目と2日目があるのに3日目だけないのは中途半端でイヤなので書くけど、淡々とした事実の羅列になっちゃうかも。



 とりま、まずは3日目の講座について書きます。

1、過去50年間の学習法の変化とインターネットの恩恵

2、Concordia Language Villages2週間体験記

3、マイナー言語ネイティブの子育て奮闘記

4、マイナー言語教材作りの提言

5、チェルケス語講座

6、使用言語が人格に及ぼす影響



 1はThe Coming Golden Age of polyglots (ポリグロット黄金時代の幕開け)と題するスティーブ・カウフマンさんの講演。元外交官で、7年ごとに赴任した先々でその国の言語を習得していったご自身の学習法を時代の趨勢と共に語る講座でした。印象的だったのは、リール式テープレコーダー、カセット、CD、スマホアプリなどと機材は変わっても、その学習法は基本的には変わっていないこと。まずは徹底的なインプット(読むと聞く)から入り、体系的な文法理解はある程度インプットが溜まってから。そして習得語彙が3000語になって初めて、満を持してアウトプット(話す・書く)を始めるという方法です。Youtubeでも開示されていますが、ここまで包括的なお話をまとめて聞けたのは初めてかも。

 2は、Concordia Language Villagesという施設体験談。その方は2週間、それまで全くやったことがなかったフィンランド語で挑戦されたそうです。アメリカはミネソタ州にあるようで、広大な敷地内に言語ごとに「フィンランド村」「スペイン村」「ドイツ村」「フランス村」「韓国村」などが点在しており、たとえばフィンランド村では、フィンランド風の建物で、フィンランド料理を食べながら村人(フィンランド語ネイティブ)と生活しながら思い思いのスタイルでフィンランド語を学ぶようです。まるで言語テーマパーク♥ こーゆーの、めっちゃ好み〜! 学費は一週間で1000ドル(10万円ちょっと)。悪くないよね? これは相当体験してみたい!!

 それぞれの村の整備はその国に関連する企業なり団体なりがスポンサーになって支援しているそうです。たとえば韓国村は韓国政府が経済的な支援しており、群を抜いて立派な村ができている。一方、日本村は敷地にぽつねんと鳥居が一つだけ( ̄◇ ̄;) 建物などの整備計画がかつてあったのだそうですが、2008年のリーマンショックで頓挫し、その後新たなスポンサーが見つかっていないとのこと。どうよ、この韓国との差

 この講座のもう一つのつっこみどころは、講師ご自身。「今まで言語の習得に苦労したことはない。新しい語彙は何度か聞いて何度か書けば覚えられる」のだそう^ ^; 語学に才能は関係ないとよく言うけど、やっぱ天才っているんですねえ。あとからググったら、Alexander Argüellesという言語学者で、ポリグロットの中でもズバ抜けた才能の方だそうです。・・・そうだよね、こんな人がそうそういてたまるか!

 3はチェルケス語(wiki英語版)の子育て奮闘記。講師の方は、コーカサス出身(ロシア内。ソチの近く)の両親がチェルケス語を話すのを聞きつつ、ご本人はアメリカで英語で育ったそうです。でも大人になってからチェルケス語を学ぼうと思い立ち、お父さんに教えてもらい、手に入る限りのチェルケス語書籍を集め、文法を整理し、この言語をお子さん(4歳と2歳)に受け継がせようと夫婦で奮闘。「今のところは上手く行っている。でも大人になるまでチェルケス語を使い続けてくれるかどうかは分からないし、まして孫の代に受け継がれるかどうかは全くわからない。でもいまは自分にできる最大限の努力をするまでだ」というのを聞き、思わずほろりとしてしまった。

 チェルケス語は話者200万人。話者数を聞くとそんなにマイナーな気はしませんが、話者のほとんどは英語やロシア語といった大言語とのバイリンガル。次の世紀には存在するかどうか分からないそうです。大言語ネイティブの方が経済的に有利。チェルケス語話者で経済的に成功した人がいればまた違ってくるのだろうけど、今の現状では生き残るのは無理そうだとのこと。一部の大言語を除く世界のほとんどの言語が同様の絶滅の危機に瀕している。

 5の講座の時間帯は、本当はかの有名な若きポリグロットLindie Botesさんの講座を聞く予定だったのですが、3があまりによかったため、急遽変更。チェルケス語講座行っちゃいました^^。

 チェルケス語、めっちゃ難しい~~~! なんせ子音の数が56!(母音は2つないし3つ)。世の中にこんなにたくさんの音があるのか、ってカンジ。カタカナでメモろうと思っても、全く書き表せない音の連続。

 しかも膠着語。メインの動詞に接頭辞や接尾辞がやまほどくっついているとか、もはや無理ゲー^^;

 でも楽しい〜〜! Lindieさんの裏番組だったからこの講座を選んだ人は比較的少なく、他の参加者との連帯意識を感じました。

IMG_6026.JPG
↑キリル文字ベースのチェルケス語アルファベット。




 今回の福島ポリグロットカンフェレンスの参加者は約300人だそうです。例年のカンフェレンスに比べるとだいぶ少なめ。

 そのうち、日本人はおそらく10人くらい。日本人かな?と思う人には一応片っ端から声をかけましたが、その7割は中国か韓国の方だった^ ^; 日本人より中国人の方が確実に数が多く、また一人一人がよく活躍している。聞いた話では、韓国人も10人弱いるとのことでした。

 全体的なマジョリティはやはり欧米人。特に英語圏であるアメリカとイギリス。次がフランス、ドイツなど。東欧諸国やロシア語ネイティブは少なかった。欧米の方は参加回数も多い。アラビア語ネイティブ、インドネシア語ネイティブは見つかりましたが、トルコ語ネイティブは探したけどついに見つかりませんでした。ラテンアメリカのスペイン語ネイティブにも会えなかった。

 国ごとに参加者の数が、如実に経済状況の強さを示している気がしました。閉会式のときにフィリピンの方が「今回は開催地が日本と聞いて、1年間旅費を溜めて来られた。もっと遠かったら航空券が買えない。次も東アジアでお願いします」と発言しているのを聞いて切なくなりました。でもそのあと発表された次の開催地はメキシコだそうです。



 今回3日間で50人くらいの方とお話ししました。2日目の午後あたりから、すでに話した人が他の人に紹介してくれるようになりました。あと講座のあと、講師や質問者に発言内容に関して尋ねたり。

 講座の予定が立て込んでいるので、一人ひとりと長くはお話できず、閉会後もすぐ空港に向かわなくてはなりませんでしたが、ラッキーなことに、なんと帰りの空港のチェックインカウンターで、ちょっと気になっていた日本語学習中の英語ネイティブと偶然再会し、席を隣にしてもらい、フライトの間中2時間ずーーーっと喋って帰ってきました。今回チャンスがあればランゲージ・エクスチェンジをやってみたかったので、最後に果たせた感じです。



 輝かしい欧米のスター・ポリグロットに憧れて決めた参加でしたが、もしかしたら今回の一番の収穫は、日本人同士、および同じ東アジアの韓国、中国の方々との連携を図れたことかもしれません。近くの国の方は顔も文化も似ていて、話していて気がラク。気の合う方とは本当に気が合う。仲間って感じがしました。このご縁は末長く大事にしていきたいです。


 楽しい楽しいカンフェレンスでしたが、まあやっぱり周囲との力量の差は痛切に感じました。今かつてないくらい「もっと外国語がうまくなりたい!」という気持ちでいっぱいです。

 コメント欄を開けておきますので、ポリグロットカンフェレンスについて何かご質問があればどうぞ。


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 22

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い 面白い
ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス
ガッツ(がんばれ!)

この記事へのコメント

gündelik türkçe
2019年10月24日 08:58
いつもブログ&インスタ拝見してます。
うさぎさんの投稿を見て、私もカンファレンス参加したかったのですが、当日他の試験があり泣く泣く断念しました…
すごく興味をそそられるテーマばかり!私もそちらにいけば良かったです(TT)

参加者の皆さんは、大体何ヶ国語くらい話されてましたか?まだ3ヶ国語しかまともに使えないので、こんな私でも参加して大丈夫なのか次回の参考にさせていただきたく。
うさぎうさぎ
2019年10月24日 20:32
gündelik türkçeさん、はじめまして^^。ハンドルネームから察するに、トルコ語学習者かな? 今後ともよろしくお願いします^^

ええと、言語の数は、ネームプレートの国旗の数を見る限り、母語を入れて3-4言語というのが平均的なところだったと思います。どれくらい話せれば国旗を貼るかも、超初心者からネイティブレベルまで千差万別。ネームプレートの国旗は「その言語で話しかけてね」という意思表示のようなもので、わたしはいっぱい貼っちゃいましたが、上手いと思われても困るので、レベルを書き添えました。

カンフェレンスに参加するしないは、英語がある程度できるかどうかが一つの判断基準になると思います。英語さえできれば、他の言語が全くできなかったとしても、レクチャーや他の参加者との会話を楽しめるので、参加する価値は充分にあります。逆に、英語が苦手だと、他の言語がどれほどできたとしても、ちょっと寂しい思いをするかもしれない。日本人同士でツルもうにも、日本人、ほとんどいないですしね。

英語力については、youtubeでポリグロットが配信している動画が理解できるかが一つの判断基準になると思います。

ポリグロットカンフェレンスは毎年ありますし、毎年春にはPOLYGLOT GATHERINGというまた別の会が行われていますので(来年はポーランド)、まだまだ参加のチャンスはありますよん^^ 楽しいのでぜひぜひ~。
2019年10月27日 13:26
ポリグロットカンファレンス、楽しそうですね!
私は、今まで、「英語で60点取れたら、次は、英語で80点目指すより中国語で60点目指そう!」と考えていたのですが、単なる旅人ではなくて、仕事で語学を使おうと思ったら、やはり60点では足りないと痛感しました。
ポリグロットの道は奥が深いですね!
私も、うさぎさんに負けぬよう、精進いたします!
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
うさぎ
2019年10月27日 19:37
keiichiさん、こんにちは^_^

>やはり60点では足りない
60点とはご謙遜を。字幕なしで映画が見られるなんて、ほんと、憧れちゃいます。

でもおっしゃる通り、多言語では食っていけないのは確かですね。今回のカンフェレンスでもそう感じました。私が聞いた範囲では、多言語を武器に仕事をしている人は、ごく一部のハイパーポリグロットのみ。他の方は、語学とは全く違うことをお仕事にされている方が多かったです。コンピュータ言語の多言語で飯を食ってる人は意外といましたが。わたしも似たようなものかな。

keiichiさんのご活躍が今後も楽しみです^_^
Yuka
2019年10月31日 13:15
はじめまして!Yukaと申します。
うさぎさんのHPには数年前から通わせて頂いておりまして、特にフランス語やドイツ語、スペイン語の学習においては大変お世話になって参りました。いつもありがとうございます。更新楽しみにしております。

今回が初めての書き込みとなりますが、
このように決意して書き込みを決めた理由として、実はわたしも今回のカンファレンスにも参加していたのです……。
ただ、本当に残念なことに、ここ数ヶ月多忙に伴いHPを訪れていなかったため、うさぎさんも来福されてることに気づけず、先程久々にブログを訪問したところその事実を知り、仕事中にも関わらず膝から崩れ落ちました……
何せ、わたしにとってはうさぎさんこそが憧れのポリグロットの方でしたので、せっかくの機会をみすみす逃してしまったということで、本当に自分に対してショックが大きいです。
感想拝読しましたが、うさぎさんもカンファレンス楽しまれたようで、何よりでした。

もう少しお伝えしたいことがあるので、後ほど、恐らく今日〜明日にはメールフォームにて連絡させて頂きます。
突然のコメント失礼致しました。
うさぎ
2019年10月31日 22:04
Yukaさん、はじめまして!

あれ、ポリグロットカンフェレンスにいらしてたんですか! じゃあもしかしてお話してるかも?? 日本人と思われる方には片っ端からお声をかけたので。それでも本当に日本人だったのは7、8人くらいでしたので、また数人くらいはいるかなーと思っていました。

ごめんなさい、今メールフォームはいま調整中なんです。調整がめんどくて、半年くらい放ってあるのですが、この機会に調整するか、新しく作り直すかします。数日お待ちください。調整終わりましたら、この欄にてご報告しますね。わー、ポリグロットカンフェレンスについて語り合うの、楽しみですーー。
うさぎ
2019年10月31日 22:14
Yukaさま

取り急ぎ、いま簡易的なお問い合わせフォームを作りました。

http://kiriusa.com/wordpress/index.html

です。

メールお待ちしています^^
Yuka
2019年11月01日 00:23
返信ありがとうございます!
そしてご多忙の中、メールフォームのご配慮・ご対応までありがとうございます。
先ほどメールを送付致しました。お手すきの際にご確認頂けますと幸いです^^
gündelik türkçe
2019年11月13日 09:36
うさぎさん

詳細ありがとうございます!
御察しの通り、トルコ語学習者なのですが、次回のpolyglotイベントに向けて英語もやり直し始めました。やはり目標があると勉強も充実しますね。

ちなみに別記事のことで申し訳ないのですが、私半年ほどマルタで生活していたことがあります。懐かしい〜!冬のマルタにはいたことがないので感想楽しみにしています^ ^
うさぎ
2019年11月13日 20:46
へえー! 偶然ですね〜!
フランスやドイツならいざ知らず、日本人にとってマルタってそこまでメジャーな行き先ではないのにね。このブログを読みに来てくださる方って、不思議と被りますね^_^ 類友ってことかなあ笑

ロシアとかハンガリーとか、他にも候補はあったのですが、2月でも寒くないところってことで、マルタに決めました^_^ ちょうどカーニバルの時期なので、楽しみです^_^